メンタルヘルス

大阪の学会に行ってきました

 今週末は大阪で開かれた学会に参加してきました。会場は、大阪市中央公会堂。公会堂って、公民館の大きなやつかな?くらいに思って行ってみると、あにはからんや、ものすごく立派な建物でした。

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 ね、すごいでしょう? 何でも明治時代に商業で富をなした何とかさん (スミマセン名前忘れました) が寄付したそうな。周辺の建物も立派でしたよ。こちらは市立図書館。
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 周辺は川沿いの中之島で緑も多く、とても雰囲気の良い所でした。
 学会ではいろいろな学びがありましたが、北里大学の宮岡先生のお話が興味深かかったです。この先生は医療のもたらすマイナス面に目を向けるように指摘しています。例えば、ある疾患に対する治療薬が開発されると、そのことによって病気が治って利益を受ける患者様ももちろんいるのですが、過剰診断によって病気にされてしまう方もいるというのです。例えば、武田鉄矢のコマーシャルを見たことがあるでしょう。「ビリビリ、チクチク、それは神経障害性疼痛かもしれません」てやつですね。「リリカ」というお薬を作った会社が製作したものです。このコマーシャルで神経障害性疼痛と診断される方が不自然に増えてしまった可能性があるというのです。同様の事がうつ病やADHDの治療薬でも起きているといわれています。疾患喧伝 disease mongeringと言うそうです。
 薬物だけではありません。我々の行っているうつ病休職者支援、リワークもそうした危険性があります。あまりにリワークを「善」として勧めてしまうと、本当は必要のない方までも長期の休職を強いてしまうかもしれません。短期間で戻れる力のある方は短期間で戻っていただき、本当に必要な方に利用していただけるように、我々の視点を常にニュートラルにしておく必要があります。
明日からの診療に活かせるお話を聞かせていただきました。
 ではまた。院長のブログでした。

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診療報酬改訂に思う

 平成28年4月に2年に1度の診療報酬の改訂が行われました。「診療報酬ってなに?」って感じですよね。診療報酬とはいわば医療の値段の事です。診察がいくら、デイケアを利用するといくら、検査がいくら、処方箋発行料がいくら、など国が決めた値段があるのです。皆さんがクリニックに受診した時には、その値段のうち保険等を使って一定割合の自己負担額を会計で支払っているわけです。国は2年に1度その値段を見直し、改訂を行っているのです。
 今回、私達精神科クリニックにとっては少し大きな改訂がありました。1つは多剤投与に対する報酬の減額措置、もう一つはデイケアの利用制限です。多剤投与に対する措置とは、1回の処方に対して、うつ病等の治療薬である抗うつ薬を3種類以上または、統合失調症等の治療薬である抗精神病薬を3種類以上処方すると通院精神療法という診察代が半分に減額されるというものです。半分に減額というのはクリニックの経営を考えると痛い措置です。減額の理由としては、一人の患者さまに対して、同じような系統の薬を何種類も出すことはよろしくないという考えです。日本は世界一医療費の自己負担の安い国と言われています。そのため、治療の効果がないとすぐに薬を増やしたり別な薬を加えたりすることが安易に行われているという実態があります。医療費全体の高騰の原因にもなっているとのことです。われわれ医師の立場からすると当然のことながら、儲けようと思って薬をたくさん出しているという事は全くなく、症状のなかなか良くならない患者さまに対してあれこれと薬の工夫をしているうちに次第に薬の種類が増えてしまったという所なのですが、漫然と何種類も処方していることは反省しなければなりません。
 次にデイケアの制限の方ですが、こちらは1年以上デイケアを利用する際には原則週に3日までとし、それ以上利用する場合には一定の条件をクリアしなければならいというものです。こちらの制限の理由として国が言っていることは、1年以上デイケアを利用するような状態の患者さまは、デイケアに来ているだけでなく、作業所や就労支援施設等の利用を目指していきなさい。デイケアばかりに留まっていずに、次の段階に進みなさい、という意図のようです。フムフム、われわれもそう思います。しかし、みんながみんなそう順調にはいかないことも確かで、私はこの制限には反対です。ある患者さまは何年も引きこもって家から出られずにいました。訪問を繰り返して本人と治療関係を作り、ようやく少しずつ外へ出られるようになるまで1年を要しました。1週間に3時間だけデイケアに出てこれるようになり、少しずつ参加回数を増やしていきました。次のステップに進むまでにはあと数年を要するかもしれません。こうした患者さまにとってはデイケアは治療の希望であり、デイケアなくしては回復はあり得ないのです。デイケア利用制限がこれ以上進んでしまうと、大きな損失を被る患者さまが出てきてしまいます。国の決めたことには逆らえませんが、私達は現場の実態をしっかり国に伝えて、必要な人に必要な医療が受けられる環境作りにも努力しなければなりません。
 以上、久しぶりの院長のブログでした。
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 写真は最近我が家に来た八重桜です。秋に庭に植える予定。

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クリニック初の学会発表!

久しぶりの院長ブログです。
先日、平成26年11月2日に日精診チーム医療・地域リハビリテーション研修会という学会が名古屋にて開かれました。
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クリニックからは作業療法士がクリニックでの取り組みを発表しました。「リワーク支援におけるコメディカルスタッフの企業介入について」という演題です。
リワークというのは、うつ病等の心の不調により休職している方への支援の方法です。家庭で療養していて、うつ病がある程度良くなっても、復職となるとハードルは高くなります。休職中に低下している体力の問題、仕事に必要な集中力や、色々なスキルの問題、対人関係の問題等々。そもそも休職に至ったという事は、職場での今までの方法に問題があったという事。その問題を解決しておかないと、復職しても再度ストレスを被って、再休職という事もあり得ます。そんな問題への支援としてリワークがあります。
復職時の問題としてもう一つ、復職についての会社との交渉の困難さがあります。いつからどんな形で復職するのか。会社側も復職者を迎えた経験が少ないとしたら、困難さはアップします。これまでは休職している本人に会社とのやりとりを任されていた事が多かったようですが、小澤こころのクリニックでは、そこのやりとりに積極的にスタッフが介入しています。休職者の病状説明から、復職時期、復職時の仕事内容、軽減勤務の方法等々。休職者も企業も当事者であるという考え方です。その取り組みについての発表を行いました。
さて、肝心の作業療法士ですが、元々臆することのないスタッフですので、見事に堂々と発表しました!ついでにクリニックのフットサルチーム、アレグラッソ甲州についても宣伝してきましたよ。
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研修会も、発達障害やリワークに関して、今後に生かせる様々なエッセンスを吸収して来ました。
時間はあまりありませんでしたが、名古屋コーチンと味噌カツを頂いて、紅葉に囲まれた名古屋城を眺めてきました。
今後も、こうした学会への参加を積極的に行い、より良い支援を提供していけるように努力していきます。

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